時差ぼけだ。
眠れないので、父の昨日の様子を2年前と1年前の同じ時期と比較して考えていた。
認知症はどういう形で進行しているのか。
大きく違うのは認知機能の低下。
目で見たものを、頭の中にある情報とつなげることがむずかしくなりつつある。
そうか、だから認知症というのかと今更ながらつくづく考える。
父が姉と私の区別がつかなくなってきたのは、つい最近のことだ。
実は姉と私は声がそっくりなので、電話で話すと相手は全く区別できない。
見た目は全然違う。
身長は姉が162㌢、私は姉より5㌢高い。
だから全体的にはまあ似ていなくはないかもしれない。
が、顔は姉妹とは思えないほど似てないですねえ、と初対面の人には必ず言われる。
ところが、父は数ヶ月前から全く区別がつかなくなったようだ。
それまで声では区別がつかなかったものの、顔で間違うことはなかった。
最近目が見えにくくなった上、認知機能が落ちたせいでわからなくなったのだ。
来年の今頃は娘が二人いるということも覚えてないだろうなと思う。
2年前は病院に入院、病棟3カ所を転々としたあと、介護老人保健施設2カ所にそれぞれ3ヶ月ずつ住んだ。
そしてその後今のホームに移った。
今のホームでも2階から3階に移ったが、地域や部屋の位置などの認識に問題はなかった。
今の個室に移ったのは1年ちょっと前。
その頃は外の景色を見ることもあったが、今は全く興味を示さない。
1年前は補聴器を昼用と夜用に交換するのも問題なかった。
色々な面において手順を踏んで何かをする、ということができた。
それが今年のお正月前後に夜用の補聴器が壊れ、新しい補聴器が届くまでの10日間交換しなかったことで手順がわからなくなってしまった。
一昨年はアイスクリームを食べに外出したり、出かけるのが好きだった。
が、去年ぐらいから億劫がるようになり、今は全く出ない。
一昨年は病院や施設の廊下も毎日歩いて運動をしていたが、今年はもう殆ど歩かなくなってしまった。
食堂までとぼとぼと歩くだけ。
今日は夕方6時頃行くと、父は機嫌良くご飯もしっかり食べていた。
お饅頭を食べながら、父は戦争中台湾にいたこと、造船所で働いていた時のことを詳しく話す。
だが、父は今日は大事なことを聞きたいと言う。
「女房殿はどうしたかなあ。どうも死んだような気がしてならん。」と言うのだ。
母の死は4年前だから、やはり新しい記憶なのだ。
アルツハイマーにかかると新しい記憶ほどなくしてしまう。
母は80歳まで生きたのだから、長生きしたということになるねえ、と父を慰める。
それでも父は自分の不安が的中したことに失望し、泣き始める。
そのすぐあとにはまた同じ質問。
1時間15分一緒にいた間に6回ぐらい聞くのだ。