ところが父は森先生の所に行くのがいやだ、と言う。とにかく疲れてしまった、とても90歳の老人が何度も何度も行けない、と。先週は何度も行ったのに、とよく覚えている。でも行って診察してもらわないと回復したかどうかわからないよ、と言っても頑として行かないと言う。へとへとなんだということだ。
雑炊と金時豆の朝食 |
12時頃帰るよ、と声をかけると「ところであんたと姉ちゃんはどうして一緒に来んのか。」と言う。必ず別々に来る。一人二役しているのではないか、と言いたげだ。まだ猜疑心や不安感が大きいらしい。それなら今晩は二人揃って来ると言ってホームをあとにした。
電車は1時間に4本 |
帰り道近所のスーパーに寄って父のバックを買う。父は手帳、扇子、補聴器の乾電池などを入れたバックをいつも手放さないのだが、古く小さく使い勝手が悪い。軽い素材でできたダンロップのバックを買ってあげた。1980円。
夕方6時半に行くと父は別人になっていた。晴れやかな顔で食事も完食していた。なんでも午後3時に突然霧が晴れるように頭がクリアになったそうだ。疲れも余り感じない。明後日は森先生の所に行けるかもしれない、と言う。バックを見せたら喜んですぐ詰め替えをしている。全てが何も問題のない父の姿だ。
とりあえず今晩は大丈夫かな、と帰り道また父の要望で扇子を買いに行った。2階のお友達佐野さんにあげたいんだそうだ。明日は9時までに行かないといけない。父の血液検査があるからだ。もしまた猜疑心が少しでもあるなら、注射はこわいと感じるかもしれない。だから9時の注射予定時刻までに行っておきたい。
かろうじて無人駅ではないが |
毎日朝は機嫌がいいが夜は悪い、というようなはっきりと定まったパターンというものがない。だから、ホームでエレベーターを降りる時はいつも少し緊張する。また幻覚が始まってソファでバリケードを作って自分の部屋に誰も入れない、という日がまた来るかもしれない、と毎日怖い。
1階リビングから外を見ると鮮やかな紫陽花が満開だった 向こうに見えるのはJR |
完全にトラウマだ。