2015年11月10日火曜日

ケータリング 前編

本人たちや家族を入れて26人の披露宴はマリーの家の裏庭である。ケータリング業者が12時にマリーの家に入り、お寿司を握る場所やビュッフェテーブルをセットアップする。テーブル、椅子、お皿、グラス、ナイフやフォーク、ナプキンなどは全て業者が用意してくれる。殆どの物は水曜日のうちに運び込まれる。

マリーの家の裏庭は我が家のよりずっと広い

メニューは、
カリフォルニア巻き
野菜巻き
スパイシー蟹巻き
サーモン巻き
はまち巻き(マリーの好物)

招待客は自分の好きなものをその場で作ってもらえる、という形だ。

次男たちのための特別巻き:はまち、アボカド、うなぎの入った巻き寿司、上にはまちを載せたものはあらかじめ用意される。

オードブル:チキンと野菜の餃子、上海スタイルルンピア、ステーキと野菜のバーベキュー、天ぷら。

ビュッフェ:マンゴーとサーモンとカイワレのサラダ、もち米、豚の丸焼き、青梗菜とアスパラのオイスターソース炒め、Aクラスのトライティップビーフのソテー、お蕎麦、刺身サーモンのフィレ。

これは一人頭165ドル。プラス税金とチップ20%。

試食会の食べ物はなかなかおいしかった

お酒も頼むととても高いので、自分たちで調達したらどうですか?ということ。良心的な業者だ。シェフ二人、バーテンダーを含む全部で7人のスタッフが派遣される。披露宴のあと夜8時には全て片付けて引き揚げる。その際汚れたお皿は勿論、ゴミも一切合切持ち帰り月曜日にテーブルや椅子などを引き取りに来る。

ケータリング業者での話し合い
話してみるととても感じのいい人たちだったので契約を交わす

レストランの一室を借りてする披露宴の方が楽だし、もしかしたら安いかもしれない。なのに、二人はレストランではいやだ、もっと皆が家庭的な雰囲気の中で楽しめる披露宴にしたい、Rusticつまり素朴なフランスの田舎家の裏庭で集まるような雰囲気にしたい、だから、我が家よりもずっと大きな裏庭のあるマリーの家でする、ということになったのだ。

業者が実際にマリーの家に来て話し合った。裏庭なら思った通りの飾り付けができるが、話している間にも雨が降り続けている。記録的な干ばつの夏が終わり、今度は例年より雨が降る秋になるらしい。雨が降ったら披露宴はどうなるのか。

マリーの家のキッチンは我が家のよりずっと大きい

まず大きなテントを3つ借りないといけない。寒いのでヒーターを5台借りる。その上大きなアウトドア用の照明が必要だ。それだけでも千ドルは超える。ケータリングも含めて結婚式の費用は全て自分が払う(結局ウェディングドレスとお花はマリー母が払ってくれる)、と次男はマリー両親に言ったらしい。そのことに関しては複雑な気持ちだが、実際一番の問題は雨が降る裏庭で披露宴をしたいか、ということだ。

業者から妥協案が出た。食事をする1時間半はマリーの家のダイニングルームでする、あとはアウトドアにバーやビュッフェを設置するのでどうか。早速ダイニングルームに移動し、フランスの田舎風の飾り付けができるインテリアかどうか調べる。

結果。業者が言う。『素敵なインテリアですね〜。さすがにきれいにしてありますね。でも、これはrusticな雰囲気とは違うインテリアなので、トラディショナルな飾り付けにする方がいいかもしれません。』

部屋のインテリアはどちらかと言えばモダンとトラディショナルのミックス

これにマリーがヘソを曲げる。唇がとがっている。自分の家の『(マリー曰く)ダサい』インテリアが好きじゃない上、念願の田舎風セットアップができないのだ。確かにマリーの家のインテリアは20年前のモダンという感じではある。次男も少し表情が硬い。う〜ん、当分もめるな、これは。

ふと私の頭の中に、ある考えが浮かぶ。

『うちでするのは?』次男にそっとささやいた。次男の顔に灯りがともる。我が家は暗い色のフローリングと白い壁なので、まあ田舎家風と言えなくもない雰囲気だ。が、その途端リビングルームの惨状を思い出した。

なんでうちでする、などと言ってしまったのか。




悪魔がささやいたとしか思えない。