2013年6月22日土曜日

父篭城する

昨日の夕方、相談員マネージャーSさんが父と話してくれたあと、父は穏やかさを取り戻した。6時前に姉がホームから帰る時、父は見送りに行くと1階に降りて来た。Sさんも一緒だ。手を振って姉を見送る父。不安を感じながらも姉は帰宅した。

一息ついて姉と二人で夕食。その後録画してあったテレビ番組を見て、リラックスした。勿論父は大丈夫だろうかという思いは消えない。長い一日だったのでそろそろ本でも読んでくつろごう、とそれぞれの部屋でベットに入った。その直後。10時過ぎていた。Sさんから姉の携帯に電話がかかる。

話し始めた姉はまず「7時半ですか。」と言う。緊迫した表情だ。父が遂に3階から飛び降りたのか、と心臓が早鐘のように打ち始める。電話を切った姉は、父が姉を見送ったあと7時半まで1階から動かなかった、その後3階に上がって夕食を少し食べたあと部屋にスタッフを一切入れなくなった、と言う。夜の薬も一切拒否してSさんも入れない。

父の部屋にはベランダに大きな掃き出し窓と、胸の高さまでの窓がある。父がベランダに出ようとしているので、スタッフがベランダ外部から鍵をかけた。廊下からスタッフが少しだけドアを開けて覗く。父は窓のそばに置いた椅子に座ったり、歩き回ったり落ち着かなく動いている。

重大なミスを犯したと責任を感じているだろうSさんが夜通し監視します、と言う。家族にすぐ来てくれとは言わないが、やはり落ち着いて家にいるわけにはいかない。姉が出かける準備をした。その間私が熱いお茶をポットに入れる。そして二人で家族のアルバムを探した。父と思い出話をして興奮をなだめようと思ったからだ。ところが今は父の物を片付けている所で、姉が引っ越しの準備のために置いている家具や箱に紛れて見つからない。

姉は翌朝9時に新しいマンションの登記に行かなければならない。まずその書類準備をしてから、ホームに泊まり込みになってもいいように、毛布や本を抱えて出た。

父の部屋に到着した姉はそっと部屋に入って、普通通り父に話しかけようと思っていた。が、姉の姿を認めたSさんは父の部屋のドアを開けて「娘さんが来てくださいました!」と大声で声をかけた。その途端父は警戒して、姉のことも姉に似せて変装したホームのスタッフだと言い部屋に入れない。


結局1時間以上ドアの外で粘ったが部屋に入れないとわかった姉は、Sさんにあとを任せて帰ることにした。Sさんはドアのすぐ外でほんの小さな動きも聞き逃さないように待機している。が、父はものすごく頭の働く人なのだ。Sさんの裏をかいて脱走する可能性は高い。侮ってはいけないのだ。帰る際姉は「父は知恵の廻る人だと言うことを覚えておいてください。明日からの監視態勢も考えてください。」と頼んで、1時頃帰って来た。

今朝は4時半から目が覚めて心配で寝られなくなった。しかし今からホームに駆けつけると、夕方までまた釘付けになる。午後1時からはホームの老年内科医との初めての顔合わせがある。今日からこの先生に森先生から引き継がれる予定だったのだ。しかし、当分森先生との付き合いは終わりそうにない。誰よりも父を理解してくれているのは森先生なのだ。

Sさんに電話して様子を聞いたが、父は一晩中寝ていないようだ。もしかしたら少しは寝たかもしれないが、部屋の中が暗く伺えない。が、音から判断するとドアの前にソファなどの家具を置いて、絶対に誰も入れないようにしているようだ。今日は頭脳戦になる。

父に勝つのはむずかしい。