このベストがそうだ。
夏も着ている。
他にもあるが、特にこれが好きらしく、なかなか洗うチャンスがない。
腹巻きも腰をサポートするベルトも同じものをつける。
誰でも自分が好きな洋服というものはあるものだ。
が、父の場合特にうるさい。
ズボンにはベルトを通せるものがいい、とかズボン下は裾が絞られていないものがいいとか。
お店に行って父のものを探すのは大変だ。
長い時間をかけて探す。
買っても結局使わなかったというものがどれだけあるか。
新品のままタンスの奥にしまわれた洋服や下着が多い。
腹巻きは特に何年も使った、ゆるゆるになったのがいいみたいだ。
だから、ずっと父の腹巻きを編んであげようと思っていた。
娘に編んでもらったものなら嬉しくて使うだろう。
ホームのスタッフにも娘が編んでくれた、と自慢したいだろう。
去年も一昨年もそう思っていた。
なのに父の世話で精一杯で編み始めることがなかった。
サンノゼにいる時に作ればいいのに。
一旦編み始めたら仕上げていただろう。
去年までだったら私が編んだ、ということを父は覚えていたかもしれない。
でも今年作ってあげても父はそのことをすぐ忘れてしまい、古いボロボロのを使うのではないだろうか。
母にはマーガレットという袖付きの肩掛けを何枚も作ってあげた。
昔は自分でもとても凝ったものを作っていたのに、最後の10年は編み物ができなくなっていた。
ねじり一目ゴム編みで父に腹巻きを作ってあげよう。