2013年7月4日木曜日

父がまたおかしい

森先生の所には姉と二人で行った。どうもいつスイッチが入るのかわからない父を抱えて、とにかく気の休まる時がない。いつホームから電話がかかって来るか、と思うと身体が緊張してだるい。ストレスは極限に達している。

薬の服用をやめたのだから、父は正常に戻るはずだった。ところが48時間穏やかな状態が続いたのでホッとしたと思ったら、突然スイッチがオンになるというように予測がつかない。ホームから電話がある。明らかに父はおかしい。せん妄状態の時と同じようなことをブツブツ言っている。せん妄はもう終わったのではないか。何故なんだ。

加茂川は雨で水量が増していた
川床がたくさん出ている

ホームに駆けつける。父が穏やかになるまで2時間ぐらい話す。昼間ホームに行って3時
間ぐらい一緒に過ごして穏やかな顔を見て安心した帰ったあとなのに。もう疲れ切ってしまった。父のために姉は仕事もしていられない。

森先生の答え。認知症病棟に入院することはできます。例えば4週間くらい入院して、家族が休むということもできます。本人の意志に関わらず強制入院です。その間は面会はできますが、お父さん自身の自由はありません。4週間後ホームに戻ることができるかどうかはわかりません。

姉と二人顔を見合わせる。それは望むところではない。父が4週間の入院で治るとは思えない。それは事態を悪化させるかもしれない。

森先生は続ける。ホームのスタッフが、ご家族に来てほしいと言われるから駆けつけるんですか。それとも先手を打ってご家族が自分から駆けつけるのですか。そう言われてみると自分たちが先手を打って駆けつけている。父が迷惑をかけるだろうと恐れるからだ。

先生は言う。「1週間だけホームに任せてみませんか。自分たちが先手を打つのではなく、ホームから来てくれと言われた時だけ行くのです。ホームのスタッフを神様のようにほめてください。お父さんに信頼感を持たせるのです。1週間後それでも全く変化がなければそのとき入院しましょう。」

森先生は4週間の入院に家族が同意しないというのはわかっていたのだ。それでも家族の意識を変えさせるために、強制入院という言葉を出したのだ。そうか、先手を打って家族は駆けつけてはいけないのか、それは逆効果なのか。

今日は3時頃ホームに行った。父は明るく穏やかだ。父にスタッフの名前を教えて紙に一緒に書く。実はスタッフの名前は今まで私自身覚えていなかった。結局一人一人を信頼してなかったし、名前は覚える必要性を感じなかった。でも彼らもそれぞれ個性を持った人間なのだ。そうか、まずは家族が信頼感を持たなければならないのだ。

祇園四条駅
京都ではエスカレーターの
右側に乗る人が多い

父とエレベーターの所に貼ってある、スタッフの写真と名前入りのポスターを見に行く。取りあえずは4人のスタッフの名字を父に教えて何度も何度も復唱する。父はこれが気に入ったようで、優しいのは江川さん、体格の大きい看護師さんは徳山さん、などと覚えて行く。嬉しそうだ。そうか、これでスタッフを信頼することができるようになるかもしれない、良かった、大成功だ、と嬉しくなった。

そのあと穏やかな父の姿に安心感を持って祇園に行った。今日は長男と長男の友人を夕食に連れて行く予定だったのだ。祇園四条駅で降りて河原町の方に向かう。ここにおいしくて安くて店員が教育されていて、と何拍子も揃ったレストランがある。予約を取るのはかなりむずかしい。6時半ならまだ取りやすい。

合流した姉と4人で食べまくる。父も穏やかな姿だったので、安心して久しぶりにゆったりとした気分で梅酒ソーダを飲む。おいしい。トマトを煮たもの、冬瓜のからし味噌、水茄子のお造り、アボカドとトマトのシーザーサラダ、ほたてと水菜のサラダ、サーロインステーキ、豚ばら肉、椎茸の大根醤油、ひらめのお造り。




楽しい時間を過ごしたあと近くのデパートに行ってジェラートを食べる。8時半だ。幸福になった所で姉の携帯が鳴る。勿論父のホームからだ。お父さんがお話ししたいそうです、とスタッフが言う。父は「これから言うことをよく聞いてください。問題があるけど今は言えません。警察立ち会いの元話したいのですぐ来てください。」と始まる。延々と同じことを言い続ける。


電話口で何か理屈を通そうとしても通用しない。父は興奮状態にある。スタッフに換わってもらうが、どうにか父を落ち着かせようと努力してくれているらしい。幸福な気持ちから一気にどん底に落ちる。今までならこの時点で駆けつけた。しかし今日は我慢する。取りあえず1週間はホームに任せること。ホームから来てくださいという言葉が出るまで我慢するのだ。

帰り道の車の中からホームに電話してみる。補聴器の電池のことで少し不安になっておられますが、今一緒に話していますとスタッフは言う。父が後ろで大きな声を出しているのが聞こえる。かなり興奮した声だ。スタッフも不安そうな声だが、お願いしますと言って電話を切った。

10時15分にホームから電話がかかる。ドキッとした。しかし、お父さんが落ち着かれました、という報告の電話だった。ホッとする。それではもう今晩は駆けつけなくても良さそうだ、とシャワーを浴びた。浴び終わった所で姉が電話を持ってお風呂場に入って来た。父から電話があったのだ。二人の娘の声を聞かないと安心できない。どうも何かだまされているようだ。娘の声だが本当に娘なのか。

父が質問を始める。「おばあちゃんの名前は何ですか。」「あんたの生年月日を言いなさい。」などなど威圧的に話す。完全におかしい。理屈は全く通じない。どうにか5分ぐらい話したあとスタッフが出て「それでは電話の電源を切ります。」ということだった。

身体が緊張したまま寝た。いつ呼び出されるかわからないから、洋服は全てそばにセットして寝た。一体何が原因なのか。いつまでも寝付けなかった。