本来ならば父のホームで訪問医の診察を受けるべきなのだが、父の場合外部の主治医にそのまま診てもらっている。
9時に診察券を入れたが連休前のせいか今日は混雑している。
父は12番目だそうだ。
ホームの車で父が病院に到着したのは10時32分。
実際に診察を受けることができたのは12時前。
これは比較的短時間の待ち時間と言える。
長い時は3時間待ちということもあった。
そんな時父と一緒に待つのは大変だった。
2年ほど前の父は暑い、気分が悪い、喉が乾いた、お腹がすいた、暑い、暑い、とまあひっきりなしに文句を言う。
が、父のアクセルはもう完全に勢いを失ったようだ。
今日の父は時たま頭が痛い、どうしてかなあ、と言うだけで辛抱強く待っている。
診察室に入ると父はガラッと変わる。
森先生の問いかけににこやかに返事をし始める。
よく寝られます、食べられます、などと答えている。
が、最近の父は何を言っているかわかりにくい。
森先生によると、これは構音障害。
話す内容は普通だが、唇や舌の機能が低下したためにろれつがうまく回らない。
だから聞き取りにくい。
頭が痛いのは、季節の変化によって自律神経がうまく機能していないため。
突然の痛みの場合は診察が必要だが、慢性的な痛みは心配ない。
穏やかですね、と言う森先生の感想を受けてホームの相談員Sさんが、報告する。
『でも、夜中とか目がさめると誰かにいてほしい、とずっとスタッフを呼び続けられます。』と。
森先生はそれに対して『日中活動量が少ないせいですね。』という診断だ。
それはそうだ。
父は1日中ベットに横たわり宙を見ている。
まあ、順調に(?)父のアルツハイマーは進行しているということだろう。
3ヶ月後の予約をしてホームに帰ることにした。
3ヶ月後の父は一体どんな状態なのだろうか。
もしかしたらもう生きていないかもしれない。
父の姿に活力がないのは言うまでもないが、どんよりとした父の目を見ると本当に悲しい。
父がホームからのお迎えの車を待つ姿を、写真に撮っておくことにした。
もうこれが最後かもしれない、と思うと涙が出て来て困る。
まばたきをし続けて我慢した。