なんでこんなに腹が立つことばかりなのか。
これが年を取ったということなのか。
いや、年を取っても穏やかな人は多い。
人間としての修行が足りないのか。
きっとそうなのだろう。
朝10時からのワイワイ広場に父を連れて行くために、9時45分にホームに行くと、父が不安なことをスタッフに言い募っているところに出くわした。
元々不安症なので何か自分がすべきことがあるのではないか、目に光が入った、風邪をひいたかもしれない、などなど理由を作っては不安を訴える。
そんな父をワイワイ広場に連れて行った。
が、ここしばらく父は行くだけでニコニコしていたのに、今日の父は始まるまで大きな声で何かを訴え続ける。
今日は何曜日?とか、険しい顔で言い続けている。
そのたびに父のそばに行って『もうすぐワイワイ広場が始まるから、静かにして。』と言うと一旦は納得する。
が、1分後にはまた険しい顔をして大きな声を出す。
これは新しい症状だが、認知症が進行したせいなのだろう。
始まってからも殆ど参加しない。
東京音頭を一緒に歌いましょう、と先生が声をかけてくれる時だけ大きな声で歌うが、その他の時はずっと頭に手をつけたまま身動きしない。
イベントの間じゅういつも思うのだが、気がつくスタッフは本当にノンストップで動く。
私もいつも風船をふくらませたり、イベントの補助をするのだが、スタッフの何人かは殆ど立ったままの状態で、動かない。
どんなに優しいいい人だとわかっていてもこれはイラつく。
中でも毎回一人の女性スタッフに特にイラつく。
なぜなら入居者に投げやりなタメ口でしゃべるからだ。
『あかんで。』
『この椅子に座り』
『ほら、こっちに投げるんやで。』
『おしっこ行きたいんか?』
ととても面倒そうな、まるで幼児に対するような話し方。
これが毎回不快でたまらない。
ここにいる入居者は高齢でボケている人も多い。
が、戦争をくぐり抜けて必死で生きてきた人ばかりだ。
ボケているからと言っても子供ではないのだ。
これはホームに投書しよう、と決心する。
終わったあと部屋に連れて帰りしばらく横にいても、父は不安そうに何かを訴えている。
大丈夫、と声をかけると『大丈夫?』と繰り返すだけで会話にはならない。
急いでiPhoneを出してイヤホンを両耳に入れて耳を塞ぐ。
どんなにすばらしい演説をしていても、これでは耳がおかしくなりそうな大音響だ。
内容を聞いてみようとは思えない。
ランチを食べに行ったパン屋さんでは、半分以上のお客さんがタバコをひっきりなしに吸っている。
分煙でもないのだから、文句は言えないがイラつく。
う〜む、どうも過剰にイライラしているようだ。
確かに5年前は、ここまで物事に対して腹が立つことはなかった。
楽しいことを考えないといけない。
険しい顔の老人にはなりたくない。
家に帰りアプの部屋に行ってメールチェックをすると、次男とマリーから猫の写真やビデオが送られてきていた。
かわいい。
が、何か視線を感じる。