アメリカに住んでいても、70歳を超える頃には『日本に帰りたい』と思い始める人が多いらしい。
アメリカの老人ホームではやはり美味しい食事が望めない。
山歩き仲間の一人Mさんが『親にも最後まで美味しいものを食べさせてあげたいですね。』と言った途端に、涙がじわっと浮かんだ。
これはいつまでたっても私の心の中の痛点らしい。
父のホームの食べ物が美味しくなかったことが、本当にかわいそうだったと私が言うと、Mさんに『それはお父さまがそうおっしゃったんですか。』と聞かれる。
それには答えることができなかった。
もう痛点を過ぎて心がズキズキし、隠れて涙を拭くのが精一杯だった。
父は決してそれを私にも姉にも言わなかった。
何度も書いたが、それを私や姉に言うことで自分のためにお金を使わせてはいけない、と思っていたのがよくわかる。
アマゾンで注文したレトルトの介護食の方をずっと美味しい美味しいと食べるので、それをホームのスタッフに預けてはいた。
が、忙しいスタッフが、父のために特別な食事を毎日用意するわけにはいかない。
ホームの食事のメニューは悪くはなかった。
ただ、味がなかった。
毎日食事を運んで介助することができたなら、もっと美味しいものを食べさせてあげられただろう。
でもそれは無理だった。
今度私が日本に行った時には、粗食の毎日にしてみようか。
そうすれば少しは罪悪感が薄まるのだろうか。
いや、それではせっかくの日本が楽しくない。
一日一食は美味しいものを追求してもいいだろうか、などとすぐ考え始めたりする。
今の自分の楽しみは、京都や東京で街を歩き美味しいランチを食べるためにフラッとレストランに入り、リーズナブルな値段で食事をすることなのだから。
いやいや、だからこの数年血液検査の結果が悪いのだ。
悪玉コレステロール値なんて高値安定してしまっている。
特にこのところ以前よりもっとパンが好きになってしまい、そればかり食べている。
父への気持ちの整理のためにも食生活を変えよう。
自分の腹・尻を見て思う。
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