手術手術と言うが、これは治療であって手術ではない。
日本では痛み止めを使う場合もあります、と書いてあるのにこちらでは全身麻酔までするのだ。
友人Y子が言う。
全身麻酔するのはアメリカ人が我慢しない人種だからよ、多分、と。
色々なことに我慢強くないアメリカ人は日本人よりも多い、と独断と偏見で考える。
日本人は耐える民族だ。
歯医者さんでだって散々治療の痛みに耐えて来た。
だから、こちらでちょっとした治療の痛みを感じてもなんともない。
私を治療しているドクターHに、助手のタミーがささやく。
「ほら、彼女を見てごらんなさい。顔の筋肉一つ動かさない。」
だから模範的な患者と呼ばれる。
これぐらいの痛みで他の患者はどこまで騒いでいるのだろう、と思った。
そういえば出産の時も、周りの陣痛室から聞こえて来る阿鼻叫喚の中で、私は一人『ククククク』と耐えていた。
Yは続ける。
「手術中にちょっとでも痛みがあったら、アメリカ人は大騒ぎするんでしょ。だから、そうなった時対処が大変だから、最初から全身麻酔するんじゃない?」と。
そうか、そういうアメリカ人の犠牲になって、私は全身麻酔で『手術』するのだろう。
だから、前夜からは飲食してはいけないし、『手術』後24時間は家で誰かが付き添うこと、と書いてあるのだろう。
などとアメリカ人を皆ひっくるめて『我慢できない人』と無理矢理結論する。