父は義理の息子が大金持ちだと思っている。何故なら娘が何度も日米往復できる財力があると思っているからだ。日米往復はマイレージを使うことが殆どだし、別にお金持ちではない。決してない。が、父はそう思うことでとても幸せらしい。だからそう思わせておくことにしておく。
夫は今年の春に日本に来る予定だ。どこに連れて行こうかと父に聞いてみる。仁和寺がいい、と父が言う。
父は思い出す。仁和寺に行って桜を見た時びっくりした。池のほとりに咲く御室桜の美しさを見て、天下に及ぶものなし、と思ったと言う。自分も一緒に行きたいとまで言う。
仁和寺は紅葉もいいですがね |
スタッフは、明るい顔で大丈夫ですよ、頑張ります!と言ってくれた。が、十中八九無理だろうな、と思った。
案の定夜7時半にスタッフから電話があった。やはり少し興奮した父の声が背後から聞こえる。スタッフに、どうしても今日中に娘に伝えたいことがある、家族内のことなので娘が来ないと伝えられない、と言っているらしい。姉が行くことになった。
姉が着く頃には父は穏やかになっていたらしい。一日でもホームに家族が行かずにすむ、という日が作れるようになるのだろうか。それともこれから事態は悪化するばかりで、そんなことは望めないのだろうか。
ところで仁和寺って池あった? |