2013年2月28日木曜日

アダルトスクール

アダルトスクールで日本語初級のクラスを担当している。5人の生徒は主に昼間働いている人たち。今回のクラスはシリコンバレーらしく3人がエンジニア。男性4人に女性1人。このクラスではJapanese for Busy Peopleという教科書を使っている。日本語に関しては白紙状態の生徒に何から教えるか。昼間は各々仕事があり、語学習得に費やせる時間は限られている。だからアダルトスクールでは会話が主体だ。


ところで、日本語を母国語としない生徒に教える時いつも気がつくこと。それは日本人には聞こえない母音が、彼らには聞こえてしまうということ。例えば『図書館』という言葉。勿論日本人にはtoshokanと聞こえる。これが生徒たちにはtoshoukanと聞こえる。ひらがなで『としょかん』と書いている生徒が多い。『辞書』も『じしょ』と聞こえてしまう生徒が少なくない。

日本語の音には必ず母音が含まれているが、英語には含まれていない音もある。例えばskyという単語。sには母音がない。また、rhythmという単語には母音がないが、日本語にこういう言葉はない。

反対に日本人が英語を習う時に聞こえない音がある。例えば英語のスピーカーにはtoneとtornは区別がすぐつくけど、英語にあまりなじみのない日本人には区別がつきにくい。あれ、ちょっと音が違うかなと思っても、rが入っているか入っていないかはなかなか聞き分けられない。

夜2時間近所の高校の教室を借りる


夕べはこのBusy Peopleたちにまず数字の読み方を教えた。日本語の数字の読み方には普遍性がなく慣用によることが多いので、生徒たちには記憶するのが大変だ。NHK放送用語のハンドブックには発音の仕方の基準がある。まず単独の場合の発音は以下の通り。

0  レイ
1  イチ
2  ニ
3  サン
4  ヨン(シ)
5  ゴ
6  ロク
7  ナナ(シチ)
8  ハチ
9  キュウ(ク)
10 ジュウ

4、7、9は原則として初めの発音を優先するが、場合により( )内の発音をしてもよい。しかし、これらの数字のあとに名詞(助数詞や単位)がつく場合の発音、読み方には、それぞれの語の伝統的な独自の読みや慣用がある。数字のあとに『年』がつく場合もその一つ、とハンドバックには記してある。

そして、物によっては数え方が違う、ということを教えた。日本語はこの助数詞が発達していて500種類ある。教えながら『では山の場合どう数えるのだろう。まさか1山2山でもないだろうし』などと考えていた。調べてみる。なんと山は1座2座と数えるんですね。

助数詞についてWikipediaで調べてみた。引用する。

『助数詞には漢語のものと和語のものがある。和語の場合10以上になると各桁を「あまり」や「まり」で区切り、桁ごとに助数詞をつける。例えば「十二柱」は「とはしらあまりふたはしら」というように。

漢語の場合は音便化や連濁も多く、しばしば前の語の音によって読み方が変わる。しかし、「三回」(さんかい)、「三階」(さんがい)の例のように、現代音だけで考えるとどんな場合に連濁するか、音便化するかという法則を知るのはむずかしい。』

クラスではこの連濁する数え方も教えたが、この清音が濁音に変化するパターンを覚えるのが生徒にはとてもむずかしい。

『今日は2種類の数え方だけ練習しましょう。Tシャツや紙のように薄く平らなものはいちまい、にまいと数えます。鉛筆やフォークなど細長いものは、いっぽん、にほん、さんぼん。他に細いものって何があるかな。ネクタイ、傘・・・。そうそう。そういう細長いものはいっぽん、にほんと数えましょう。』


記憶するのはむずかしいが、とりあえず皆一応納得した顔で授業終了。が、一人の生徒が『センセイ』と手を挙げる。




『傘が開いている時はどう数えるんですか。』