その8年後に再婚するまで、亡夫の親や9人の義兄弟たちと大家族農家で子供4人を育てた。
姑は本当にすごい。
大声で話し、ピンクのTシャツに赤いズボンを履いてパンチパーマをかけている姑は、怖いもの知らずだ。
日本では親戚の誰もが自分と一緒に歩くのをいやがる、と姑はいつも言う。
日本でのレストランでは喫煙者に『タバコを吸うのをやめなさい!』と威嚇してやった、と自慢する。
職場では気に入らない同僚に『あんたは皆から嫌われてるよ。性格悪いね。あんたの母親も性格が悪いんだろうね。』と言ってやった、と胸を張る。
言葉はきついが悪い人ではない。楽しい人でもある。
が、いつも自分が一番正しいと確信している姑を、私は友人として選ぶことはないだろう。
決して。
姑に何を言っても、勝ち目はない。
さらりとやり過ごすしかない。
そしてこの姑と、夫より13ヶ月年上の兄 と11ヶ月年下の義妹1はそっくりなのだ。
この3人が怒り狂った。
12月末に長男が入籍したことを、長男も私の夫も(夫の)母親や兄弟姉妹に報告していなかったからだ。
ふとしたことで長男とサキの結婚を知り、報告されていなかったことに傷ついている、というメッセージが義妹1から私に来た。
私がすぐ長男に連絡し、長男が入籍報告のカードを送った。
そして、このカードがコロラドの親戚たちに新たな怒りをもたらした。
長男が去年、私の旧姓に改姓したことが明らかになったのからだ。
姑、兄、妹1が爆発した。
何故なら彼らはKで始まるアルファベット8文字の苗字を誇りに思っている、なのにその苗字を継ぐ長男が改姓してしまったのが理由だ。
この40年間私は姑、義兄、義妹1から彼らの苗字がどれだけ由緒あるか、日本では皇族に近いような家柄(勿論デタラメ)であったか、ということを呪文のように繰り返し聞かされていた。
日系一世二世に多いこういう全く根拠のない家柄自慢。
実際この話をすると、日本から出張で来た夫のいとこ(同じ家系)は『一体どこからそんな話が出てきたんだ!』とびっくりしていたが、家柄自慢は彼らの心の支えなのだろう。
特に姑と義兄は妄執的でさえある。
義兄に至っては結婚披露宴テーマは家柄のことであり、家紋を文化刺繍で作らせ会場に置いた。
苗字+一族という文字を胸に大きくプリントしたTシャツまで作り、私たちにも着るようにと送ってきたりしたのも義兄だ。
幸いなことに私の夫はこれに無関心だった。
それどころか、自分も私の旧姓に変えようかなあとなどと言うぐらいだ。
次男は4年前、長男は去年改姓手続きをした。
それ以来、アルファベット4文字の苗字で人生が変わるほど楽になったと言う。
元々の夫の苗字はアルファベット8文字で、姓を名乗ると必ずスペルを教えてください、と言われる。
そして、この苗字をアメリカ人はまず発音できない。
例えば古賀山という苗字だとケイ・オー・ジー・エー・ワイ・エー・エム・エーとスペルを毎回毎回言わないといけない。
それもなんども聞き返される。
ところが私の旧姓の4文字だと簡単だ。
次男が4年前に改姓した時、姑、義兄、義妹1は激怒した。
義兄は次男に向かって「お前の母親が無理やり改姓させたんだろう」と私の目の前で言い放った。
次男は「いや、自分自身の決断」と返事していたが、彼らは納得しなかった。
ちなみに私の両親は苗字に全く執着がなく、私の代で苗字を受け継ぐ者がいなくなることを気にもしていなかった。
今回長男が改姓したことが明るみに出て、姑たちの私への怒りは新たな段階に入ってしまった。
なぜなら義兄には子供がいず、義妹たちは結婚を機にそれぞれの夫の苗字に変えたからだ。
つまり、家族の中にK姓を名乗る男子がいない(従兄弟の息子にはK姓がいる)。
何よりも自分の息子(私の夫)の長男が後継であるべき、と騒いでいた姑が怒り狂っている。
夫に電話してきて、私とサキを責めた。
長男や夫を責めずに、私とサキを責めたところがポイントだ。
怒りは嫁たちに向かうのである。
いわく嫁たちはK姓の高貴さと歴史を理解していない、なんと勝手なことをするのか。
長男がこれに対して怒りを爆発させた。
小さい時から何もしてもらったことがない親戚から、どうしてサキが責められないといけないのか。
何かをしてくれたのは、日本の親戚や血のつながりがない伯母や叔父たち(姑再婚相手の連れ子たち)ばかりだった。
今回結婚報告のカードを親戚に送った際も、おめでとうという返事を送ってきたのは、日本の伯母さん以外ではこの血のつながりのない親戚だけだ。
血の繋がったコロラドの祖母や伯父叔母からは一切無視されている。
彼らのドラマにはもう辟易してる!と言う。
先週末サキ母ともう一人の友人Mとランチに行った。
その時、このことでサキは数日間泣いて落ち込んでいた、ということをサキ母から聞いた。
上記の長男の怒りについても、サキ母からの報告だ。
なんとまあ、バカバカしいと二人は苦笑いする。
そしてここは夫が立ち上がらないといけない、と言う。
夫は苦手な義兄や義妹1と言い争うのはいやなので、長年何か問題が勃発しても必ずだんまりを決め込んでいた。
私のことはともかく、なんで息子たちを守ろうとしないのだ!とサキ母と友人Mが言う。
姑たちに縁切宣言をするか?それとも夫に縁切宣言をするか?
いや、もっと建設的なことをすることにした。