その際正社員として年収4万から5万ドルで雇用されるかも?と期待していたのだが、叶わなかった。
つまり来週の金曜日で失業することが、決まったわけだ。
ところが、その計画はマリーが失業することでおじゃんになった。
結婚後自分が生活費を負担し、マリーが学生ローンを毎月2000ドルずつ返済するというのが、次男の計画だった。
正確には84000ドルのローン。
そのうち8000ドルはマリーが以前から貯めていたお金と、インターンをして貯めたお金で先月返済した。
残りは76000ドル。そのうち44000ドル分には7%の利子がつく。
まずそれを一刻も早く返済しなければならない。
マリーが毎月2000ドルずつ返済すれば、2年で48000ドルが返済できる。
だがその時点で、残りのローンは28000ドル(76000−48000)ではない。
なぜなら毎月利子がついてローンは増え続けているわけだから。
学生ローンはアメリカでも大きな問題になっている、まるでサラ金で抱えた借金のような利子が利子を生む負債だ。
これを簡単にするために3万ドルローンと呼ぼう。
3万ドルローンの方は、利子が3%ぐらいなので、これは急いで返済する必要はない。
預金から得る利子率の方が高いからだ。
お金はローンに充てるよりは預金し、少しずつ返済すればいい。
マンハッタンで公認会計士をしているマリーの伯父さんに相談したところ、3%の利子は心配するな、それは時間をかけて返済していけばいい、と次男の考えていることと同意見だった。
ところが、その計画はマリーが失業することでおじゃんになった。
仕事は見つかるのか。
次男は一気にストレスを抱えた顔をしている。
今年末から始まるサンフランシスコでの生活。
家賃も含めた生活費を自分一人で全てまかなえるのか。
考えた末、まずワインを売ることにしたと言う。
去年ナパバレーに行った時買ったワインを、サンフランシスコにあるワイン専用倉庫に預けてある。
まずはそれを売ることにした。
Craig's List(家、車、ペット、家庭教師レッスンなどなど、あらゆるものを売買するサイト)に『ワイン売ります』と広告を出した。
なんと1時間後には買い手がついたのだ。
買った時の金額で引き取ってくれるそうだ。
では、引き渡しのお手伝いをしに、一緒にサンフランシスコに行きましょう、と夫と私は『自分一人でできる。』といやがる次男に申し出た。
そもそも暗い倉庫で見知らぬ人間と、7500ドルもの現金取引など一人でしてほしくない。(一応次男は買い手のことはオンラインで調べていたらしい。)
ところが売ったワインは、たったの3本だと言うではないか。
つまり1本2500ドルだということ。
これにはたまげた。
次男は投資のために買ったのだそうだ。
いずれ1万ドルになるはずのワインなのだと言う。
ここ数年カリフォルニアでは干ばつが続いているが、干ばつの年のワインは甘くておいしい。
大儲けを夢見て買ったらしいこのワインには買い手が殺到して、正価の1000ドルで買うには20年待ちのリストができている(次男は2500ドルで買った)。
しかし、どんな理由にしても、そういう大金をかけて一攫千金を狙うなんてバカじゃないのか?
倉庫までの道中、値段が上がるのがわかってるんだから売らなきゃいいのに、とマリーがずっと怒っている。
その一方、私は次男がこのワインを手放すことに大きな安堵感を覚えていた。
『今晩飲むために買いました。』という買い手に無事引き渡しもすんで、現金をすぐそばの銀行で入金し、一件落着である。
この二人、大丈夫なのだろうか。
結婚していいのか?
余りにも幼いのではないだろうか。
子供なんか当分作るなよ、と心の中で祈る。