2018年5月21日月曜日

母 最期の日々 ⑥ 呼吸が止まる

9月20日の朝、F本さんが母の痰吸引をするために病室に入ってきた。



F本さんは18歳ぐらいにしか見えないあどけない顔のスタッフで、看護師さんだったのかどうかはわからない。



吸引を始めようとしたがチューブがうまく入らない。



強引に母の気道にチューブを差しこもうとするF本さんを、私はハラハラしながら見つめた。



母が呼吸できなくなったのがわかった。



母の両手が宙をかく。



『やめてください!!』と私は叫んだ。



びっくりした表情で私を見るF本さんに私は声を上げた。



『息ができないじゃないですか!』



不満そうにチューブを抜いたF本さんが、母を見た途端青ざめた。



母の顔色は紙のように白くなっていた。



呼吸が止まっていたのだ。




F本さんがベルを鳴らし、ガラガラとワゴンを持った数人の看護師、医師が入室して私に廊下で待つように促す。



私はガタガタと震えながら姉に電話した。



母が呼吸をしていない。



母が死ぬ。母が・・・



医者の措置により蘇生した母はもう一度呼吸し始めたが、そのまま集中治療室に運ばれて行った。



その後、主治医が廊下で私に告げた。



母は肺炎の状態になっている、今後は肺炎の治療をしないといけない。



『それは今朝の吸引の失敗が原因なのではないですか。母は回復し始めていましたよね?そろそろ胃瘻の手術をして、療養型病棟のある病院に転院する予定だったではないですか。』と私は言った。



が、主治医は否定した。



『こういうことはよく起きるんです。回復していたと思っていても、なにしろ高齢の方です。突然こういう状態になることもあるんです。』



当然納得できない答えだったが、今ここで議論をしても病院側が認めるわけがない。



これは後日話すことにして、今は母の肺炎に対処するしかない。


暗い暗い思い出なのに、高速道路を運転していると
何故かいつも母の最期の日々を思い出す

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