2015年10月16日金曜日

まだら

父が92歳の誕生日を迎えた。92歳の父は突然小さくなった。わいわい広場で隣に座る衣笠(仮名)さんと同じぐらいの体型だった父は、知らぬ間に衣笠さんの3分の2ぐらいになっている。



そして髪が薄くなった。つまり栄養状態が悪いのだろう。一日中不安材料を見つけては、その不安を呟いている。その呟きも聞き取りにくくなりつつある。

父の好きなヤクルトをあげても、飲み始めると嚥下に不安があるようで、吐き出そうとする。そして詰まった詰まった、と咳き込み続ける。身体を起こしてあげて自分が納得するまで、詰まっている、と訴える。自分の不安で自分の具合を悪くしてしまうのだ。


おとといの父は姉と私のことが認識できるけど、名前がわからなかった。昨日の父は私が懐かしい誰かだというのがわかるけど、やはり名前が思い出せなかった。今日の父は私の名前が思い出せなかったが、夫の名前を思い出すことができた。『あんたの婿さんは、器用で人間性が奥深いなあ。』と父特有の話し方をする。

ついこの前までは母が死んだかどうかはっきりとはわからないようで、それでも生きていないかもしれないという恐れを持って『女房殿は死んだかのう。』と聞く父だった。それが今では母の死はやっと父の脳に刻み込まれたようで、死んだかどうかは聞かなくなった。今日、父は『ワシは女房が好きで好きでたまらんかった。』と母が死んだことを前提で話すのだった。『でも早よ死んで、かわいそうになあ。』と涙を浮かべる。

なのに、私が来月次男が結婚する、と話すと「あんたもおばあちゃんになるかもしれんか。ははは。」と笑うのだ。本当に父を見ているとまだらボケという言葉がぴったりだ。



いや、実はまだらボケしているのは私かもしれない。

この写真は大事なハンコの隠し場所がわからなくならないように、撮っておいたものだ。



この暗闇は一体どこなのだろう・・・