2014年4月6日日曜日

最終日

高校で教えていると自分が教師としていかに未熟か、と思い知らされる。今受け持っている生徒は75人だが、生徒一人一人違う人格で違う性格なのは当然のことだ。未熟だから失敗するし、あ〜あ、経験が足りないなあとがっかりする。

水曜日に激怒して教室を飛び出したCも、翌日はあっけないほどいつも通りに戻っていた。こんなに単純にまた明るくなると、悪い点を取った事がかわいそうになるぐらいだ。が、情けをかけてはいけない。ところが、今度は女生徒が牙をむいた。またまた、自分のテストの点が気に入らないのだ。この子も普段は明るく授業中の発語が多い。

代講期間中は親し気に話しかけてくる生徒も、代講が終わったあと『じゃあ、先生元気でね〜』と言ってくれる子は数人しかいない。一期一会なのだ。モールなどで偶然出会うと知らないふりをする子もいる。


授業中に楽しい話をしてあげたり、おもしろいことを言って生徒を笑わせると少し心がつながったような気もするのだが、それは幻想に過ぎないのだろう。その点はやはりアダルトスクールの生徒の方がずっと結びつきができる。高校生はその場では盛り上がっても、教師とのつながりを求めてはいない。

などとひがんで考えていたら、昨日今日、去年教えた男子生徒が3人挨拶に来てくれた。昨日挨拶に来てくれた生徒リーは『先生僕のこと覚えていますか?』と聞いた。顔は覚えているけど名前が出て来ない。それでもその生徒は大喜びで、嬉しい嬉しい、先生が覚えていてくれた、と何度も繰り返す。そしてそのことを他の生徒に言う。


すると今日は他の生徒ライアンが来た。『先生が自分を覚えていてくれた、すごく嬉しかったとリーが言っていたので、自分のことは覚えてるかなあ、と知りたくて。』とニコニコして来るのだ。なんともかわいい。

ライアンからそれを聞いた他の男子生徒がまた来る。この子に関してはジャケットのフードで顔が隠れていて、全く思い出せない。でも、『勿論覚えてるよ!』と言っておいた。満足そうだ。高校生はなんと単純でかわいいことよ、とつくづく思う。

この子たちは知らない。これぐらいのことで代講教師が夜寝る時までそのことを思い出し、反芻しながら安らかな気持ちになっていたことを。