2013年7月17日水曜日

女性の顔

あれからもう1週間。父はホームの看護師Uさんと姉の付き添いで、森先生の所に行って来たようだ。父は調子がいいので、不安や幻覚を抑える薬は引き続き飲み続けることになった。そして1ヶ月後に受診して、薬の副作用がないかどうか確認する、ということ。

父の通う病院
姉が8時半に診察券を入れて、実際の診察は11時前だったらしい。その間Uさんがずっと父と話してくれる。夜中でも何でも対応するから、連絡してくれ、信頼してくれと言うこと。Uさんは父の幻覚症状が薬のせいだと思い、ずっと自分を責めていたということだった。

Uさんはいつもおどおどしたような表情で、どんな人か以前はわからなかった。が、先週父のところに来て話している姿を見ると、朴訥ないい人だというのがよくわかった。父も「顔を見るだけで信頼できる人だとわかります。」と安心していた。でも父は女性の顔を見てはいけない、と言われて育った世代の人なのだ。とにかく女性の顔をじっと見つめるということをしない。

ホーム玄関アプローチ
ホームに帰った時、父はUさんに深く頭を下げながら「本日はありがとうございました。お世話になりましたが、私は女の人の顔を覚えられないので、もう覚えていませんがすみません。」と言ったらしい。

普段の父は陽気な人柄で、あちこちのデイサービスで友だちを作っていた。病院や老人保健施設を転々としている時も、必ず友だちを作って病棟の雰囲気作りをしている、とスタッフに言われたものだ。

中でもデイサービスに通っていたSさんとは仲良しで、しょっちゅう電話でも話していた。どうやって友だちになったか聞いてみたことがある。父はSさんに「おい、楠木正成」と声をかけたそうだ。Sさんが楠木正成に似ていると思ったからだそうだ。それから二人はとても仲良くなり、父が今のホームに入居した時には、Sさんもこのホームのデイサービスに通ってくれないかなあ、と思ったほどだ。

今父の部屋のある3階は重症の入居者が多く、特に男性は会話ができるような人がいない。2階は父のような人が多かったので、佐野さんのような仲良しができた。その点では3階にいるのがかわいそうではある。それでもある日女性入居者に話しかけている。女性の方は認知症があり余り会話ができる人ではなかったが、父は熱心に会話を続けようとしている。

以前の4人部屋

父が女性に話しかけるのは珍しい。びっくりした姉が横で様子を見守っていた。すると余り成立していない会話を続けていた父が、その女性に聞いた。

今の個室

「ところでおたく、奥さんはお元気ですか。」