2013年6月26日水曜日

薬剤性せん妄

森先生には姉と私の二人だけで会いに行った。父はやはり身体がだるいので、行きたくないということだった。不安感はまだある?と聞くと、そういう風に改めて聞かれると、100%ないとは言えないが、99%はないと言える。先生にも自分が治ったという様子をみてほしいが、今日はとにかくだるいので行けない、と言う。

その様子を森先生に見せるためにiPhoneで撮影した。父は自分の現在の状況、先生への信頼感、今日行けないのは疲れが蓄積されているせいだ、としゃべり始めると止まらない。

森先生について父は『絶大な信頼を寄せている。なにしろ、普通医者というのは自分が話して終わりという人が多いが、森先生はじっと自分の話を聞いておられる。そして最後に先生が話してくれることは、自分の症状をピッタリと正確に表現していて、いつもすばらしいと感心する。あんな素晴らしい先生はなかなかいない。』と今日診察に行けないことを謝罪しながら終える。

長い待ち時間を少しでも楽に過ごせるように、折りたたみのゆったり座れる椅子を買っておいたが、それでも何時間も待つことに耐えるだけの体力に自信がないようだ。昨日から不安感も猜疑心もなくなったようで、スタッフへの信頼感も取り戻したようだ。だるいのは幻覚を抑える薬のせいだろう。

日曜日に買ってあげたバック
父はこれになかなか慣れることが
できない
森先生にはビデオを10秒足らず見せたあと、今回の出来事で一番気になったことを聞いてみた。これから認知が進んで幻覚などをまた見ることがある場合、そういう入居者は特別養護老人ホームのケアの対象ではないのか。

例えば今回父の幻覚症状が進んでホームから逃げ出そうとした場合、姉の職場に何度も電話がかかって、そのたびに姉が駆けつけて父を落ち着かせた。ある日は姉がやっと時間を作って友人たちと食事をしている時に、ホームから電話が30分のうちに3回かかってきた。父が逃げ出そうとしている、すぐ来てどうにかしてくれ、という電話だった。

姉の返答は『行くのは構いません、いつでも駆けつけます、でもその状態で家族が行ったからといってどうにかなるものでしょうか、ホームのお医者さんはなんとおっしゃっていますか』だった。

それに対してのホームの返答は『お医者さんはもうどうにもできない。ホームはこれ以上ケアできない。家族が家に連れて帰るか、あるいはホームに泊まり込んでケアしてほしい。』というものだった。

この時のホームの対応には失望したし、これからまた繰り返されることへの恐怖がある。今回の間違いでホームも少しは学習してくれたと思うし、職員のトレーニングにつながっていく可能性もあるかもしれない。でも、職員が学んだことを実地に使えるようになるまでにはまだまだ時間がかかるだろう。

父がバリケードを作って部屋に閉じこもり、どうやって職員の手から逃れようか、と一晩中恐怖心に苛まれながら過ごしたことは、思い出しただけでも胸がいっぱいになる。バルコニーから飛び降りて、一か八か生き延びることができるかどうかやってみよう、と考えたのだ。どちらにしろ娘たちはもうこの世にはいないのだから、死んでも悔いはないと思いながら、真っ暗な部屋で一晩中過ごしたのだ。もうすぐ90歳になる老人がだ。こんなことは、父にも他の入居者にも二度と起きてはいけないことだ。

この夜のことは自分で書いたブログを読み返すこともできない。余りにも苦しい気持ちがよみがえって来るからだ。また幻覚症状が起きた場合どうすればいいのか。そのためには認知症のケアがもっと得意な施設に入所するべきなのか。

父の部屋から外を見る
父はこのバルコニーから飛び降りて逃げようとした

森先生の答えは『今後認知機能が落ちていっても、必ずしも幻覚が出るというものではありません。それは別のものです。幻覚が出たとしたら、その時は治療をする、ということでいいんじゃないですか。』だった。そうか、今回幻覚症状があったからと言って、父が幻覚を見やすいタイプだとは限らないのだ。それは全く別ものだそうだ。

先生はホームに、手紙を書いてくれた。その手紙は『今回のエピソードは薬剤性せん妄状態であった可能性が高い。今後のこともあるから原因を確定しておきましょう。ホームで処方された二つの薬の投与された時期と、状態の異変に気づいた時の二点について検証した結果を知らせてほしい』というものだった。

このような正式な手紙を読めば、ホームもこれからのケアの改善につなげていこうとしてくれるかもしれない。特に今回のミスは、『森先生にホームで処方されている薬のリストを連絡してくだい』という姉からの2度にわたる要請を無視し、そのことが重大な事故につながる可能性をもたらした、ということだった。それを今一度確認して、これからのケア見直しにつながるかもしれない。

次にしないといけないことは、4月から起きている父の妄想知覚も薬剤性のものかどうかを見極めることだ。勿論ホームを弾劾するためではない。かゆみ止めの薬はホーム入所後、一つ処方されている。今回のせん妄状態の原因となった薬とは別のものだ。妄想知覚と薬の関連性を調べることで、父のこれからのホームでの生活が少しでも楽になるようにしてあげたい。そして、ホームがケアの仕方や緊急の時いかに対応するべきか、ということをもっと学んで、高齢者がより安心して生活できる態勢を作るためだ。


夕方になると児童館に子供たちが続々と入って来る