2013年2月26日火曜日

父のこと

父は亜型アルツハイマーと診断されている。

物忘れがひどくなったのはちょうど3年前。それから少しずつ進行している。昔のことは細かく覚えている。計算も漢字を書くこともほぼ完璧にできる。普通に会話もできるし、洞察力や分析力もある。でも数分前の会話は覚えていない。

進行状態を調べるために、先月長谷川式テストを受けた。

長谷川式テストは認知症検査で、9の質問から成り立っている。記憶、注意力、場所の見当識、言葉の流暢性などを調べる。
  1. お年はいくつですか。
  2. 今日は何月何日ですか。何曜日ですか。
  3. ここはどこですか。
  4. これから言う言葉を言ってください。あとからもう一度聞きます。さくら、猫、電車。
  5. 計算をしてください。100から7を引いて行ってください。
  6. これから言う数字を逆に言ってください。6−8−2。3−5−2−9。
  7. 先ほど覚えてもらった3個の言葉を言ってください。
  8. これから5個の品物を見せますから覚えてください。
  9. 知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。
結果は30点満点中27点。9の設問ではきゅうり、じゃがいも、さつまいも、三度豆、茄子、キャベツ、タマネギ、と答えだすと止まらない。10個以上列挙したあとで油菜という野菜まで出る。

8.の5個の品物

父が答えられなかったのは2、7、8。7の設問では3つのうちの1つを思い出すことができない。ヒントを言われてやっと思い出した。8は最初に品物を見せられた時、『時計、歯ブラシ、スプーン・・・』で止まった。父は鍵を認識できなかったのだ。父が固まる。顔には大きな?マークがついている。しかし、父は何か言わないと、と焦った結果『大根おろし』と言った。

まあ、似てないとは言いませんが?
やはり鍵を大根おろし器と認識したことに自信がなかったのだろう。最後に8の品物は何でしたか、と聞かれても鍵だけ思い出すことができなかった。計算、数字の逆唱、言葉の流暢性など完璧にできる父だが、結果判定に際して鍵を握る設問は7だそうだ。これは遅延再生の障害を調べるもので、アルツハイマー患者は他の設問に正答してもこの設問だけは正答できないケースが多いらしい。

そのあと時計を描く。長針短針を使って9時半という時刻を描き入れることもできる。立方体と五角形も描ける。結果精神科医の所見は亜型アルツハイマーということだった。

シャワーを浴びながら、検査の時の『大根おろし』の場面を思い出して笑いが止まらなかった。アルツハイマーが少しずつ進行していく父のことを考えると不安になる。話しているとイライラすることもある。でも、笑える瞬間も多い。

スーパーに一緒に行く。父は歯磨き粉を買うが、5分後には忘れる。自分が買った歯磨き粉を見て『おお、ちょうど歯磨き粉がなかったが買って来てくれたか。ありがとう。』と言う父の姿は哀れで悲しいけど、
そこにはユーモアも漂う。

暑がりで腰痛持ちの父
扇子、クッション、手帳が三種の神器

そんなことを考えながらシャワーを終えようとしたが、リンスを洗い流したかどうか、どうしても思い出せなかった。